報酬刺激とは何か? ドーパミンとの関係を解説

理学療法

痛みや報酬を学んでいると、ドーパミンを放出する腹側被蓋野が重要なのは理解できた。腹側被蓋野を刺激するには「報酬刺激」が必要とのこと。

「報酬刺激」とはなにか?何か特別な刺激なの? これについて調べてみました

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    報酬刺激とは?

    報酬刺激とは以下の2つがあります

    ①生物学的に必要とされるもの(食欲、性欲、睡眠欲など)

    ②「ヒト」固有のもの(絵を見て感動する、学ぶことが楽しい、将来に向かって努力するなど)

    *②は過去の報酬経験に基づいて形成されます。前頭葉が発達している哺乳類以降の生き物にも②はあります。犬が撫でられて喜ぶ、しつけを覚えるなど。

    例としては「期待していなかったレストランでの食事が予想以上に美味しかったので、またあのレストランに行きたくなる」や「目標に向かって努力した結果が実り嬉しかったので、また次の目標に向かって努力する」、「以前腰を痛めたときにストレッチをしたら痛みがよくなったので、またストレッチをする」など

    最初から報酬として情報が入力するのではなく、入力された情報が結果的に報酬系を刺激することとなります。その結果次回からは同じ情報が入力された際に報酬系として脳内に作用する仕組みとなります

    報酬刺激はまず、他の中立な刺激と区別されることなく感覚受容器で受容されるのである。そして、感覚系においてその物理的特性を分析するための処理が行われるなかで、いずれかの段階で報酬系にその情報が伝えられ、報酬としての意味づけが 行われるのである。

    報酬の脳内表現 筒井健一郎

    報酬刺激の種類

    脳内に報酬情報として入力されるのは、

    ①外部からの刺激

    ②行為(運動・活動)による刺激の2種類があります。

    *①に関係するのは扁桃体・前頭眼窩部、②に関係するのは線条体です。

    外部からの刺激とは、外部から何かしらのきっかけを与えらると報酬をもらえるような状況。サルに複数の絵をみせて特定の絵を出した後にのみ餌を与えるようにすると、「特定の絵を見る」ことがサルにとって報酬情報と認識されるようになります。またマッサージを受けることで体が楽になる経験をすると「マッサージ」が報酬情報として認識されます。もっというとマッサージを受けるために整体に行く行動が報酬情報ともなります

    行為による刺激とは自身で動いた結果、報酬を得ることができた経験が重要となります。サルに左右の写真を交互に見る課題を与えた際に右の写真を見た後に餌を与えると、「右の写真を見るための眼球運動」が報酬情報と認識されます。運動不足でウォーキングを始めて体調がよくなり体が軽くなった経験をした場合、「ウォーキング」が報酬情報となります。いわゆるこれをやったらよくなったので繰り返すような感じです

    報酬期待という考え方

    報酬情報と認識された外部からの刺激と行為によって、報酬を得る前からドーパミンが放出される。これを報酬期待と言います。

    報酬を期待すること(=ドーパミン放出によって)には、

    ①報酬を得るために体を覚醒させる作用(自律・運動機能向上)

    ②報酬情報の学習を強化する作用の2つの作用があります

    ドーパミンが分泌されるのは実際に報酬を得た時にも放出され、側坐核からオピオイドが放出され、多幸感を生み出します。

    報酬予測誤差について

    報酬を期待してワクワク・ドキドキしていたのにも関わらず、予想してたよりも報酬がもらえなかった場合、報酬情報の認識が変わり情報の価値が下がります。逆に予想以上に報酬を得た場合は情報の価値が上がり、次からの期待値が上がります。これらのことを「報酬予測誤差」と言います

    このように「報酬の期待」と「実際の報酬」との誤差により情報の価値は変化していきます。ここでいう情報とは、先ほどの「外部からの刺激」や「自らの行動」のことです。

    報酬に関する不明な点

    感覚刺激が入力されて、どのようにドーパミン細胞に達するか?その経路は不明なようです。また報酬予測誤差の計算方法についても不明な点が多いそうですが、以下のように、脚橋被蓋核が重要な役割をはたしているかもしれません

    脚橋被蓋核(PPTN)は脳幹のもっとも主要なアセチルコリン性細胞の核であり,
    古くか ら睡眠覚醒の調節,運動制御,注意や学習と関係が深いと考えられてきた.また,DAcellに対してPPTNが最も強力な興奮性入力を供給していることから
    PPTNからの 興奮性入力が,DAcellにおける報酬予測誤差信号の生成に重要な役
    割を果たしている ことが示唆される。

    脚橋被蓋核における報酬予測誤差生成機構

    応用するなら

    トレーニング指導やリハビリはすべて外部からの刺激です。そして自ら動いてもらうことは利用者自身の行為です。この2つによって利用者が何らかの報酬を得ていればリピーターとなるかもしれません。

    また何に対して報酬を感じているのかを把握・共有することが最も重要で意外と難しいこともあるので、まずは信頼関係の構築から進めていくのが無難でしょう

    まずは、「相手にとって害がなく、考えを尊重したうえで接する」これにつきます

    <参考文献・図書>

    報酬の脳内表現 筒井健一郎


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