リハビリテーションとはなにか? 理学療法とはなにか?この二つの違いは何なのか?をまとめました。
結論、理学療法はリハビリテーションの一部でしかありません。
リハビリテーション
リハビリテーションとは何か?
reは「再び」、habilisは「人間らしい」、「できる」という語で、「 再び人間らしく生きる 」、「 再びできるようにする 」という意味になります。
リハビリテーションの語源と歴史
「リハビリテーションとは障害者が一人の人間として,その障害にも関わらず人間らしく生きることができるようにするための技術および社会的,政策的対応の総合体系である。単に運動障害の機能回復訓練分野だけをいうのではない。」
理学療法とリハビリテーション
リハビリテーションとは、①失ったものを(階級、特権、財産、名誉)を回復すること、②良好な状態に帰すること、③治療や運動によって身体的、精神的にもと通りの健康な状態に回復することである。すなわち元に戻すことである。
理学療法概論
リハビリテーションと医療の関わり
また,リハビリテーションはすべての医学,すべての医療の目的であり,例え医療で治らなくても自立的な参加が出来るところまで考慮する必要がある。自立出来なくてもその存在に意味を見出せるようにしていかなければリハビリテーションは完結できない。理学療法士はあくまでも理学療法を提供するのであり,その実践を通してリハビリテーションに寄与するものである。
理学療法とリハビリテーション
病院の目的は病気を治す事。でも病気が治り自宅に帰っても元の生活ができない人が大勢います。これはどの科でもあり得る事です。病気を治すだけでなく、元の生活もしくわ自立して一人の人間として生きていけるようサポートするのがリハビリテーション。
自宅での生活も守備範囲に入ってくるので、病院に在籍している医療職種だけではサポートしきれないので他の様々な人の手助けによってリハビリテーションは完成します。
リハビリテーションの分類、患者・対象者との関わり
リハビリには医学的・社会的・教育的・職業的などに分類されます。医学的な分野では医療職がメインに事が多いですが、その他の分野では様々な職種・人が患者に関わりを持ちリハビリテーションを進めていきます。
ご高齢の人が自宅に帰ってゆっくり過ごしたいというのであれば、ある程度病気の症状が緩和して自宅での動作が安定すれば、リハビリテーションは完成されます。
しかし働き盛りの人の場合、病気が治り自宅での生活ができても仕事復帰できないと生活できません。病気の後遺症によっては新しい仕事を探さなくてはいけないのです。そこで職業的リハビリテーションとして職業カウンセラーや家族・近所の人に相談したり、現状仕事復帰するのに問題となっている身体機能に対して理学療法を行ったりするのも職業的リハビリテーションの一つです。腰痛の再発予防や首・肩こりの防止などもそれにあります。
また、医学・理学療法との関係性について「理学療法概論」でわかりやすく解説しているので以下に紹介します。
A:医学と理学療法のみの共通分野は、疼痛の治療のための物理医学分野、整形外科疾患分野がこれにあたる。特に、慢性疾患ではなく、障害もなくほぼ完全回復する B:医学とリハビリテーションと理学療法の分野は、脳血管障害、神経系障害、その他慢性疾患など、障害者を対象としてリハビリテーション医学の範疇での理学療法である。 C:リハビリテーションと理学療法の分野は、教育的リハビリテーションの分野である養護学校での理学療法の分野が代表的なものである。また、地域社会に関した介護支援、在宅などの問題は、医学の分野ではなく福祉の分野である。今後、高齢者人口の増加などに伴いこの分野は業務が拡大するものと考えられる。 D:理学療法のみの分野は、健常人を対象とした健康対策、フィットネス、またスポーツ選手などのトレーニングなどの分野である。
加えて通所リハビリに関しては、法令でこのように定められています。
通所リハビリテーションは、法令上の基本方針として、「要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自 立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、利用者の居宅において、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持回復を図る。」と定められており、「心身の機能の維持回復を図るサービス」と偏って理解されやすい
全国デイケア協会 「活動・参加」に向けたリハビリテーションマネジメントあり方マニュアル
やはり、リハビリテーションは心身の機能回復のみではなく、その人らしく生きる・生活することが重要なポイントのようです。必要に応じて社会や政治に働きかけ障害を持った人でも暮らしやすい社会にするよう働きかけるのもリハビリテーションの一つなのでしょう。
理学療法とは
理学療法とは病気、けが、高齢、障害などによって運動機能が低下した状態にある人々に対し、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法です。「理学療法士及び作業療法士法」第2条には「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。
日本理学療法士協会より引用
リハビリテーションに理学療法は必須なのか?
理学療法とはリハビリテーションの一部でしかありません。リハビリテーションに理学療法は必須ではありません。ですが、対象者の状態によっては理学療法という治療法が効果的かもしれません。
理学療法は理学療法士によって提供される治療法です。当たり前ですが理学療法士は理学療法士である前に一人の人間です。患者・対象者に対して、理学療法を提供しなくても、たまたま担当になった一人の人間(ご近所の人みたいな感じ)として関与することで患者・対象者のリハビリテーションを進めていくことも可能です。(形式上なんとなく理学療法っぽいことをしながらリハビリテーションを進める感じ)
患者・対象者の悩みや症状は理学療法でしか解決できないものとは限りません。もとの状態を取り戻す(=リハビリテーション)のは様々な人が関わりあい、初めて達成するものです。
まとめ
リハビリテーションは幅広い人が関わり完成します。特に医療職の人はこの事を理解した上で患者さん・利用者さんと関わり、必要に応じて他部門の人やご家族・ご友人などへのリハビリテーションへの理解・促しを働きかけるのも重要な仕事の一つでしょう。
理学療法は治療技術です。技術は経験年数やセンスなど各個人で差があります。特に患者さんに触って行う治療や運動療法の選択、環境設定など様々な技術が必要とされます。
しかし、リハビリテーションに技術は必要ありません。ご家族の人やご近所の人は何一つ特別な訓練をせずに患者・利用者にリハビリテーション的な働きかけをしていることが多々あります。まずは、何に困り何を必要としているのか?を評価することが重要だと感じます。(これも理学療法技術のひとつではあります)。
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