免疫について 〜免疫細胞、サイトカイン、自律神経、炎症との関わり〜

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    免疫細胞

    免疫細胞には白血球とリンパ球がある。

    免疫機能にはリンパ球が主。白血球は異物侵入を知らせる役割がある。

    白血球

    • 顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)
    • 単球(→マクロファージになる)
    • リンパ球(→Tリンパ球とBリンパ球になる)
    白血球の割合
    割合役割
    好中球45~74%食作用*
    好酸球0~7%食作用*、寄生虫排除、アレルギー
    好塩基球0~2%アレルギー
    単球4~10%食作用*、免疫
    リンパ球16~45%免疫
    生理学テキストp236より引用

    *食作用:細菌などを取り込み、分解する作用のこと

    白血球は骨髄の造血幹細胞が元となって生成される。

    やさしいLPSより引用

    リンパ球 

    • Bリンパ球(液性免疫に関与)
    • Tリンパ球(細胞性免疫に関与)

    リンパ組織は一次(中枢性)リンパ組織と二次(末梢性)リンパ組織に分かれる。

    • 一次性リンパ性器官:胸腺と骨髄。免疫細胞の生成、成熟および分化に関与。
    • 二次性リンパ性器官:脾臓とリンパ節、腸粘膜、扁桃(口蓋扁桃や舌扁桃)など。免疫細胞が集まり、免疫応答細胞となり、ここで抗原提示やリンパ球増殖、抗体産生などが行われる。

    T細胞は胸腺で生成、B細胞は骨髄で生成される。ともに成熟・分化した後に血流にのって脾臓やリンパ節、腸粘膜、扁桃などの免疫反応の現場に移行する。

    リンパ器官(胸腺・骨髄・脾臓・リンパ節など)の血管には交感神経による支配があり、間接的に免疫機能を調節する。また交感神経がリンパ球に直接作用して免疫反応に影響を与える。

    やさしい自律神経生理学p171~

    免疫

    免疫とは体内に異物が侵入してきた際に生じる生体反応。防御反応のこと。

    侵入したほとんどあらゆる種類の微生物や毒素に対して、抵抗する能力がある。この能力が「免疫」。免疫機能はリンパ球が主で、マクロファージや顆粒球は補助。

    免疫細胞による分類

    液性免疫:B細胞が抗体を産生することによる免疫

    細胞性免疫:T細胞による免疫。免疫系の活性化を制御し、特定の活性化T細胞は抗原をもつ細胞を直接攻撃する。T細胞はT1(細胞性免疫)とT2(即時型アレルギー)に分かれる。T1とT2は拮抗して働く 生理学テキストp241参照

    T1とT2について

    免疫獲得時期による分類

    獲得免疫:免疫応答を起こさせて獲得する。B細胞・T細胞による作用

    自然免疫:産まれながら持っている免疫機能。NK細胞による作用

    ホメオスタシス

    ホメオスタシス(恒常性)とは生体の特定の状態が一定に維持されること。

    内部環境(細胞外液と細胞で構成される)のホメオスタシスは細胞の正常な活動の前提条件。ホメオスタシスでは全く変化がないのではなく、変化が小さい。外界の変化や身体活動は内部環境の状態をわずかにずらす。生体はこのずれを検出してネガティブフィードバックでずれを補正し、内部環境を正常に維持する。

    正常な細胞外液はグルコースなどの栄養素や酸素を十分に含み、pH、各種イオン濃度、温度が正常である。

    動物的機能

    生理機能で外界の変化に対応するのは動物的機能。感覚、神経、骨格筋が関与。

    植物的機能

    消化、循環、呼吸、排泄、内分泌は生命の維持に必須の機能で植物的機能と呼ばれ内部環境のホメオスタシスを成立させる。 生理学テキストp1~

    ホメオスタシスの維持には自律神経、内分泌系、免疫系がそれぞれ連絡しあい成り立っている。

    例えば、何か侵襲刺激があった場合に神経・免疫・内分泌のそれぞれの反応で侵襲刺激に対応します。侵襲(内・外的ストレス)に対して内分泌系はコルチゾール、神経系はカテコルアミン、免疫系は炎症性サイトカインで対応している。

    サイトカイン 細胞(cyto)+ 作動因子(kine)

    生体内の細胞は分化、成熟、恒常性維持のために様々な情報伝達を細胞間で実施している。この役割を担うのがサイトカイン。

    生理学テキストp239

    ここで言う情報伝達とは、伝達先を促通or抑制のどちらかに作用することを指す。サイトカインが直接的に促通or抑制に作用せずに間接的に作用する場合もある。

    サイトカインは免疫細胞から放出され、身体が感染、腫瘍、炎症刺激などを受けた際に防御反応として機能する。細胞性免疫や液性免疫、がん細胞の増殖抑制、炎症反応など多岐にわたり関わりを持つ。

    侵襲に対する侵襲に対するサイトカインより引用 
    アレルギーi参照
    慢性痛サイエンスp121

    サイトカインサイトカイン 用語集 腸内細菌学会

    サイトカインの種類

    • インターロイキン(IL)1~15
    • インターフェロン(IF)
    • 腫瘍壊死因子(TNF)
    • 腫瘍増殖因子(TGF)
    • ケモカイン 

    サイトカイン 看護ro

    炎症性サイトカイン(IL-1β、腫瘍壊死因子(TNF-α)など)の作用

    リンパ球、マクロファージ、血管内皮細胞から放出される

    血管透過性亢進、炎症細胞の集積・活性化作用、発熱などの全身急性期反応促通作用を持つ 

    機能障害科学入門p6

    炎症との関わり

    生体が炎症刺激をうけると、その局所の細胞、組織の障害、それに続く微小循環系の血管透過性の亢進が起こる。(←炎症性サイトカインの作用①? 自律神経?)

    血管透過性の亢進にひき続いてまず好中球の炎症局所への動員がみられる。

    それにひき続き、単球・マクロファージの遊出、炎症局所への集積が認められ、その結果として局所に炎症反応が誘導される(←白血球の集積も炎症性サイトカインの作用②)

    炎症巣において活性化された好中球やマクロファージは異物を貪食し、さらに消化、殺菌して生体内から排除する。これらの一連の反応にIL-1やTNF、IL-8などのサイトカインが重要な役割を果たす 。

    機能障害科学入門p9

    全身への影響、慢性炎症との関係

    サイトカインの特徴として局所産生され、局所で働くとされる。しかし、放出される量が多いと血流に乗り全身へ影響を及ぼす可能性がある。

    手術や感染などで急激にサイトカインの量が多い場合は全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる。これとは異なり慢性的な炎症がサイトカインの増加に繋がり、全身へ影響を及ぼす可能性も影響もある。


                                          炎症とサイトカイン:笠倉新平を参照

    自律神経と免疫

    自律神経の神経伝達物質
    • 交感神経節後線維からノルアドレナリンが放出。アドレナリン受容体に投射
    • 副交感神経(迷走神経)節後線維からアセチルコリンが放出。アセチルコリン受容体に投射

    腹腔神経節から脾臓(←二次性リンパ器官)に投射する迷走神経の節後線維は例外的にアドレナリンを放出する(=アドレナリン作動性神経)。

    リンパ器官の受容体はアドレナリン受容体(特にβ2)のみで、アセチルコリン受容体はあまり見られない。よって迷走神経刺激が脾臓(二次性リンパ器官)の機能に影響を与える。

    Traceyらは、迷走神経を刺激することによってマウスにエンドトキシンを投与した際の炎症反応が抑制されることをかねてから見出していたが、それが脾臓のマクロファージ上に発現するニコチン性アセチルコリン受容体α7サブユニット(α7nAChR)に媒介されることを突き止めた。α7nAChRは神経細胞ではイオンチャネルを構成するサブユニットとして活動電位の生成に寄与しているが、マクロファージにおいては種々のシグナル伝達経路を介してNF-κBの核内移行を妨げ,TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインの産生を抑制する

                                   自律神経による炎症制御 鈴木博一より引用
                                         自律神経による炎症制御 鈴木博一より引用

    自律神経による免疫反応の調節

    • 交感神経がリンパ節からのリンパ球脱出抑制⇨免疫機能低下も伴い、炎症反応低下
    • 副交感神経による炎症性サイトカイン産生を抑制

    交感神経が優位になるとリンパ節からのリンパ球の脱出が抑制される。つまり異物が侵入してきてもリンパ球での免疫反応が出現しにくく、ウイルスや細菌に侵されやすい環境と考えられる。

    逆に自己免疫疾患など、リンパ球優位の疾患の場合は交感神経への刺激でリンパ球の数が減少することで、症状の改善を示唆する

    参考文献・ページ

    リハビリ・運動への応用

    対象者の疾患や主訴、症状が自律神経とどのように関連しているのか?

    これを考えるだけでも、アプローチの幅は広がると思う。例えば肥満や糖尿病で日中も活動的ではない場合などは副交感神経優位になっている可能性がある。逆に仕事や介護・育児で疲労している人の場合は交感神経優位となった上で何かしらの症状が出現し、病院にやってくる。

    ずっと交感神経優位でリンパ球の放出抑制されていては、治癒反応である免疫機能が低下し、治癒が遅延。また精神的なストレスで痛みも増強・長期化し慢性痛へと移行してしまう可能もある。

    疾患の評価は医師がする仕事だが、その背景には何があり、それがどのように体に影響しているのか?を考察しアドバイスするのが重要かもしれません。

    加えて、対象者へのタッチ(手で触る行為)も「侵襲」のひとつになる可能性があります。逆に「侵襲」とはならず、安心させてくれるタッチなら身体的には良い方向へ向かう「手当て」となるかもしてません。

    自分以外は異物と判断するされてしまうので、自分で触るのと他人に触られるのは異なります。対象者との信頼関係や第一印象などによって同じタッチでも効果は異なるかもしれません。教科書的に正しいことが正解なのではなく、信頼関係が成り立っていると教科書的に正しくなくても対象者にとっては正解になってしまうことは多々あります。

    侵襲に対する侵襲に対するサイトカインより引用 

    触ることは「侵襲」、そのことで免疫系(サイトカイン)、神経(神経伝達物質)、内分泌(ホルモン)のそれぞれでどのような反応を引き起こすのか? 時間的にはサイトカイン(秒~分)>神経(分~時間)>ホルモン(時間~日)の順で効果は早く出現すると言われています。

    タッチのみではなく、対象者に影響を与える刺激(五感)で捉えると運動指導する時も選択肢が広がるかもしれまん。

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