腸内細菌とは何か?体への影響 ~炎症・神経・ダイエットの関係~

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腸内細菌とは大腸に存在する細菌のことで、100億個以上存在します。腸内細菌の役割について本で読んだ知識、論文での情報を自分なりにまとめました



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    基礎知識

    腸の機能

    食べ物の消化、吸収、排泄のみではなく免疫にも関与している。免疫機能の7割は腸、3割は自律神経でコントロールされている。

    腸内細菌とは

    ミトコンドリアももともと細菌の一種。悪玉菌(ウェルシュ菌、大腸菌)と善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌)、日和見菌があり腸内に100億個以上存在する。腸で消化吸収できない食べ物を、腸内細菌が消化吸収してくれることで、人の体はエネルギーを獲得できている。ちなみにほかの動物、たとえばパンダもササを食べて腸内細菌がエネルギーを吸収してくれている。

    代表的な腸内細菌

    短鎖脂肪酸とは

    短鎖脂肪酸は食物繊維やオリゴ糖を腸内細菌が消化吸収することで生成される。大部分が大腸粘膜組織から吸収され、役割として①上皮細胞の増殖、②粘液の分泌、③水やミネラルの吸収のためのエネルギー源がある

    炎症との関連

    免疫反応は7割が腸、3割が自律神経で制御されている。腸内細菌の数、種類によって神経系のコントロールにも影響を及ぼすので腸が免疫に関与するのはかなりの割合をしめている。主に免疫細胞(免疫細胞は血液成分のうちの白血球のこと。単球、好中球、好塩基球、T細胞、M細胞、NK細胞などがある)の7割が大腸の粘膜に存在し、粘膜は腸内細菌が食物繊維を分解したもので栄養を得ている。

    つまり免疫細胞は腸内細菌によって栄養を得ているということ

    こころと体の免疫学

    この短鎖脂肪酸は抗炎症作用を持ち、慢性炎症との関わりがある。関連する疾患として大腸炎、糖尿病、心臓病、脳梗塞、関節炎などが挙げられている。腸内細菌叢のバランスは恒常性に保たれているが、量的・質的に異常をきたした状態をディスバイオーシスと呼ぶ。ディスバイオーシスは異常な免疫反応、代謝異常を引き起こし様々な疾患と関連する

    腸内環境の悪化が慢性炎症につながるのは、とても興味深いところ。糖尿病や心疾患のみならず、整形外科疾患へのかかわりも多くありそう。血流不全の問題で症状が出現している疾患ならなおさら。慢性炎症になりやすい人の場合は、急性痛が消失しても痛みは消えず、慢性痛に移行して局所的な問題ではなく、中枢的での症状へ変化しやすくもなる可能がありそう

    神経との関連

    神経伝達物質

    腸は神経伝達物質のもととなる物質の生成に関与している。セロトニンの原材料であるトリプトファンの破壊を腸内細菌が阻止してくれる。セロトニンは90%が腸、8%が血小板、2%が脳内で生成される。善玉菌が脳由来神経栄養因子(BDNF)やGABA、グルタミン酸を生成している。

    無菌マウスと通常マウスにストレス負荷をかけた場合、無菌マウスの方がACTHの分泌量が多い=ストレス反応が過敏であった。ラクトバチルス菌を投与したマウスは不安行動が減少したが、迷走神経を切断すると不安行動が再び増えた。このことから同じストレス刺激でも腸内細菌によってストレス反応は異なる。腸内からの情報は迷走神経によって伝えれられることがわかる

    無菌マウスの脳内神経伝達物質量、脳由来神経栄養因子の量が通常マウスよりも少ない。無菌マウスに短鎖脂肪酸のひとつである「酪酸」と投与すると、前頭葉で脳由来神経栄養因子の増加がみられた

    腸脳相関

    腸内細菌-脳-腸 軸

    腸内にビフィズス菌を経口投与すると、迷走神経求心性線維を介して視床下部に反応がみられた。この視床下部の反応は、迷走神経求心性線維の遮断やセロトニン受容体の拮抗薬を使用することで消失した。このことは腸内細菌が神経系との関係があることを示唆している。*セロトニンは迷走神経や脊髄求心性線維を介して神経伝達物質として働く。

    インターキングダム・シグナリングという概念(細菌⇔宿主)

    本来は①細菌間の情報伝達に使用されていた物質が宿主へ作用し、逆に②宿主由来の物質が細菌に作用しその性質を変化させる。

    ①の例として、本来細菌間の情報伝達に使用されている物質が宿主に作用して抗炎症作用を発揮する。②の例は、ストレスが高まり、カテコルアミンの分泌量が増加することで大腸菌の増殖が活発になる。これは大腸菌自体がカテコルアミンの受容体を持っているため。ストレスを受け続けると大腸疾患を発症しやすくなる

    脳機能と腸内細菌叢

    腸の粘膜に刺激が加わると、迷走神経下神経節を介して延髄孤束核への求心性入力(自律神経調節、液性調節のための入力?)と脊髄後根神経節を介して視床・皮質に求心性入力(知覚のための入力)を送る2パターンの情報入力方法がある

    脳腸相関が科学的に説明できるようになってきています

    腸の神経細胞、神経伝達経路

    腸の神経細胞は1億個で脳の神経細胞数の次に多い。腸管神経系と自律神経系(交感神経・副交感神経)によって腸の機能は制御されている。腸管神経系は独自の反射経路をもっており、中枢より独立して機能することが可能。

    腸管神経系は筋層間神経叢と粘膜下神経叢にわかれており、末梢神経系で反射経路を持つことで独立して機能することが可能

    腸管神経系は運動神経、感覚神経、介在神経の3種類に分類される

    腸管神経系 脳科学辞典

    腸の内在神経は、消化管内の分子・pH・物理的変化を感知する感覚神経、消化管の運動・分泌を制御する運動神経、両者を仲介する介在(中間)神経が存在する。内在神経のみで独立して機能している点、神経細胞の数が脳の次に多い点などから「第2の脳」と呼ばれている

    ENS(Enteric Nereve system:腸神経システム)は腸内のマクロファージやリンパ球などの免疫細胞の受容体と結合して、効果を発揮することが知られている。逆に、免疫細胞からのサイトカイン、神経栄養因子なども、神経細胞の受容体と結合する。免疫細胞と神経細胞は互いに情報交換している

    ENSは腸内細菌叢の組成を調節しており、腸内細菌叢はセロトニンを介してENSの発達・調節している。また腸内細菌叢は精神的ストレスへの反応・行動などの高次の脳機能へも影響を示していおり、腸内細菌叢-腸-脳軸の重要性が注目されている

    精神的な面も腸内細菌でコントロールされるのは驚きました。迷走神経への刺激が精神的な安定をもたらし、その刺激が善玉菌(乳酸菌の一種であるラクトバチルス菌)。インターキングダム・シグナリングはとても面白い概念。腸内細菌と人はもともと異なる生体がひとつになってお互いに影響しあって共存しているのがよくわかる。

    ダイエット

    同じもの食べても腸内細菌のバランスの違いで、エネルギーがどこに蓄積されるかが異なる。摂取カロリーと消費カロリー計算だけでは説明がつかない。

    脂肪はどうやって蓄積されるのか?

    食事摂取による糖吸収はインスリンの作用により脂肪、筋肉、肝臓(糖新生抑制)で取り込まれる。運動不足状態では筋肉での糖吸収は低下し、脂肪に糖が蓄積し肥満につながる。

    このような肥満になる原因は運動不足だけでなく、脂肪細胞にあるGたんぱく受容体が関与する。Gたんぱく受容体は短鎖脂肪酸(酪酸)により活性化され、脂肪組織でのインスリン作用を選択的に抑制(=脂肪に糖が蓄積しなくなる)。逆に不活性化で肥満につながる。

    Gたんぱく受容体欠損したマウスでは通常の餌で肥満になるが、Gたんぱく受容体を過剰に発現させたマウスだと高脂肪食を食べても肥満にならなかった

    また、短鎖脂肪酸は脂肪細胞のGたんぱく受容体に結合することで、食欲をコントロールするように作用する(グレリンやペプチドYYによって摂食中枢を抑制する)。短鎖脂肪酸は腸内細菌の多様性のもとに生成されるので、種類の偏りや数が少なかったりすると生成されない。

    腸内細菌による宿主のエネルギー恒常性維持機構の解明

    腸内細菌叢はインスリンの作用による脂肪の蓄積を短鎖脂肪酸受容体GPR43を介して抑制する

    糖尿病と腸内細菌

    糖尿病との関連

    余分な食事量が増加することで脂肪細胞の肥大し、脂肪細胞が低酸素状態となることでマクロファージ放出され、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6)が生成される。この脂肪組織の慢性炎症により抗炎症性サイトカインの生成の抑制や筋肉や肝臓などのインスリン抵抗性を生じ、インスリンを大量に放出する膵臓のβ細胞が疲弊して糖尿病を発症する。この脂肪組織の慢性炎症は糖尿病のみではなく、腎不全、心不全、動脈硬化、肝炎などにつながる。

    肥満・糖尿病と腸内細菌

    脂肪細胞にマクロファージが存在するのは、肥満と非肥満の両方で認められる。しかし、肥満者では脂肪細胞が過剰となりマクロファージ(M1マクロファージ)から放出されるのが炎症性アディポサイトカイン(TNF-α、IL-6)である。非肥満者の場合は皮下脂肪や内臓脂肪にマクロファージ(M2マクロファージ)があるが放出されるのは非炎症性アディポサイトカイン(IL-11)である。

    肥満者では血中にMCP-1などのケモカインが分泌され、骨髄にあるマクロファージの受容体(CCP)に結合することでM1マクロファージを脂肪細胞に誘導している

    *ケモカイン (Chemokine) は、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現する塩基性タンパク質であり、サイトカインの一群である。白血球などの遊走を引き起こし炎症の形成に関与する。走化性の(chemo tactic)サイトカイン (cyto kine)を意味する

    慢性炎症の視点から見た 2 型糖尿病の成因

    通常、脂肪は皮下脂肪・内臓脂肪として蓄積させるが脂肪が過剰になった場合、筋肉や肝臓に脂肪が蓄積され(脂肪筋・脂肪肝と呼ぶ)、この状態を異所性脂肪と呼ぶ。異所性脂肪となるとインスリンの効きが悪くなり(インスリン抵抗性)、糖尿病発症につながる。

    健康で正常体重の日本人男性でも脂肪組織に障害

    短鎖脂肪酸の中でも酢酸と酪酸は腸管のグロブレット細胞に作用して腸管粘液分泌に関与しており、これが腸管のバリアとなる。腸内細菌による短鎖脂肪酸の生成が不足すると、グロブレット細胞に栄養がいきわたらなくなり腸管バリア機能が低下し、血中にLPS(リポ多糖類)が放出される。このLPSは肝臓や筋肉に対してインスリン抵抗性を挙げてしまう

    糖尿病と腸内細菌

    インスリン抵抗性に関しては①脂肪細胞増加による炎症性サイトカインの増加、②LPSによる筋肉・肝臓への作用、③筋肉や肝臓への脂肪の蓄積(異所性脂肪)など様々なきっかけはあるが、なぜこれらがインスリン抵抗性を引き起こすのか?

    最近の研究では飽和脂肪酸がどうやらインスリン抵抗性の原因のよう

    肥満によるインスリン抵抗性の新しい分子機構を解明

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