ドーパミンの生成、作用、回路についてまとめました。
特に神経回路では、、
- 黒質線条体回路 定位行動、注意の集中
- 中脳皮質回路 不安・不快を装飾する回路
- 中脳辺縁系回路 情動行動
- 隆起漏斗回路 プロラクチン生成制御
これらの役割があり、すべてドーパミンが関与しています
ドーパミンはどこで作られる?
中脳にある黒質と腹側被蓋野の細胞体からでる神経終末部で生成されます。
ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミンは同じ生体アミンファミリーのメンバーである。これら共通の前駆物質はチロシンで、生合成経路も共通である。ドーパミン作動性神経はシナプス前神経終末がチロシンヒドロキシラーゼとドーパデカルボキシラーゼを含有するが、他の酵素を含まないためドーパミンを分泌する。
コスタンゾ明解生理学p28より引用
チロシンはチロシンは非必須アミノ酸の一種で、体内では必須アミノ酸の一種であるフェニルアラニンから合成されます。フェニルアラニンはたんぱく質の構成材料となるほか、肝臓で非必須アミノ酸であるチロシンに変換され、興奮性の神経伝達物質カテコールアミン(ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン)の前駆体です。ドーパミンとノルアドレナリンは、刺激の伝達に役立っています。精神を高揚させて活力を生み出す作用と、血圧を上昇させる作用があります。
わかさの秘密より引用
ドーパミンの作用は?
ドーパミンの作用は情動と運動に作用します。作用する場所によって効果が異なります。側坐核に作用する場合は、やる気がでる、モチベーションがあがる、快感刺激となります。大脳基底核の線条体に作用する場合は運動調節に関与します。
また、関連する疾患としてはパーキンソン病や統合失調症、薬物依存などがあります
ドーパミンの神経回路は?
ドーパミンの神経回路には種類がいくつかあります。
黒質(A9)-線条体路
注意の集中や定位行動を起こす神経回路。具体的には眼球運動、歩行や咀嚼運動があります。黒質緻密部から線条体への入力でこれらの運動が促進されます。黒質緻密部への入力経路は不明ですが、注意喚起などで刺激されると考えられています。ドーパミンは常に活動していて(睡眠時も出力し続けています)、注意や定位行動で抑制がかかりこれが、脱抑制となり尾状核に対して興奮性の刺激を加えることになります
「定位」とは生物体が方向性をもった体位を定めること。定位行動とは、外部に何かの刺激が提示されるとそちらの方向に注意を向けるような、体位を定めるような行動。例)声が聞こえた方を見る、音がした方に体を向ける、素早く動く物に目を向ける(サッケード)
中脳-皮質路 腹側被蓋野(A10)から大脳皮質へ(前頭葉)
不快・不安などを感じた際にVTAから前頭前野に対してドーパミン放出する経路。ドーパミンは前頭前野に対して抑制系に作用します。これは報酬回路で前頭前野の活動抑制に関与して報酬あり学習の抑制につながります。加えてこの時VTAは前頭前野と扁桃体から側坐核への出力に対して抑制性に働き、報酬系回路を遮断します。
報酬あり学習の時に不安・不快を感じると効率が悪いということになります。好きなことはどんどん頭に入ってくるのに嫌いなこと(=不快なこと)は頭に入らない学習がすすまない様な状態です
中脳-辺縁系路 腹側被蓋野(A10)から側坐核、扁桃体、海馬
情動行動に深く関連する経路。情動行動は扁桃体から側坐核への入力により発現し、扁桃体は海馬と眼窩前頭前野と連絡しあっている。側坐核や大脳辺縁系(海馬、扁桃体、眼窩前頭前野)に対して腹側被蓋野からのドーパミン入力があり情動行動を誘発促進する。
そもそも情動とは感情+自律神経系の反応のこと。情動行動は情動に伴う行動のこと。
びっくり(感情)してドキドキする(心拍数の増加)それに伴い体がピンとする(行動)、怖くて鳥肌がたち(立毛筋の収縮、体熱拡散防止)両肩をさする、震えるなどがあります。これらの反応はほぼ同時に起こり、無意識に反応します
また、中脳辺縁系回路の代表的役割といえば報酬系です。例えば、食べたことがないものを食べたときに大脳皮質の感覚野に情報が入り、そこから大脳辺縁系である扁桃体で情報の価値判断(良い・悪い)や海馬で記憶とのすり合わせを行った上、食べ物がおいしかったときは報酬系として側坐核を刺激します。美味しくなかったときは懲罰系として側坐核に入力されます。
報酬系が刺激されることで眼窩前頭前野からVTAに対して興奮性入力が加わることで側坐核に対してドーパミンが分泌されます(腹側被蓋野はその他多数の神経から入力を受けるようです)。ドーパミンを受けた側坐核は内因性オピオイドを脳内の様々な部位に分泌することで幸福・快楽を感じることができます。このドーパミンの分泌量は以下のように分かれます。
- 予期しない時の報酬 ドーパミン⇧
- 予期した時の報酬 ドーパミン⇨
- 予期した時 報酬なしドーパミン⇩
期待値と実際の報酬の差が報酬予測誤差であり、日常生活でも予測誤差が生じた場合には、修正しながら行動しています
*内側前脳束とは中脳から視床下部を通って大脳辺縁系や大脳皮質へ投射する神経線維群のこと。ドーパミン作動性ニューロンやノルアドレナリン作動性ニューロンを含む
この情動行動自体は視床下部が主な中枢であり、大脳辺縁系はその制御役となっている
やさしい自律神経生理学より引用
隆起漏斗路 視床下部
この経路ではプロラクチンホルモン(PRL)の放出抑制をドーパミンが担っています。
視床下部にある弓状核にドーパミン神経細胞が存在し、そこから正中隆起に軸索を伸ばします。正中隆起からは血流にのって下垂体前葉まで到達するとそこでプロラクチン放出抑制作用を発揮します。
プロラクチンが放出された際には、弓状核に対してネガティブフィードバックによってドーパミン放出を促します。
弓状核に対して抑制に働く因子として、授乳やストレスがあります。これらによってドーパミン放出が抑制されることでプロラクチン産生され乳汁産生、乳腺発達、性欲抑制、排卵抑制などが働きます。
まとめ
4つのドーパミン回路のうち個人的には中脳辺縁系回路と中脳皮質回路はリハビリやトレーニングの際にとても重要になってくると感じます。リハビリやトレーニング内容だけでなく、介入者側のふるまいや環境の雰囲気、病院やジムに通うことで報酬系に働きかける要素や逆に印象を悪くするような要素(不安・不快)があると報酬あり学習が進むことになりません。
まずは不安・不快を可能な限り取り除いた状態で、希望を叶えてあげられるように接するのがベストでしょう
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